大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(う)859号 判決

本店所在地

東京都台東区千束四丁目四三番九号

楠本観光有限会社

(右代表者代表取締役右高一彦)

本店所在地

同都同区千束四丁目四三番九号

光陽商事有限会社

(右代表者代表取締役銀杏田和晴)

本店所在地

横浜市中区曙町一丁目五番地

横浜起業有限会社

(右代表者代表取締役宮崎正行)

本店所在地

同市同区福富町西通四五番地の二

有限会社一福商事

(右代表者代表取締役菱沼堯三)

本店所在地

東京都台東区清川一丁目二四番一四号

瀬戸観光有限会社

(右代表者代表取締役大北信幸)

本店所在地

松山市道後湯之町六番二七号

松山観光有限会社

(右代表者代表取締役田中幹彦)

本店所在地

北九州市小倉北区舟町七一番地の七六

有限会社福岡城

(右代表者代表取締役古三庄良江)

本店所在地

東京都台東区上野七丁目一〇番八号

西日本起業有限会社

(右代表者代表取締役斎藤憲康)

本店所在地

同都荒川区六丁目三四番三号

大栄観光株式会社

(右代表者代表取締役山村一恵)

本籍

同都新宿区一丁目二五番地

住居

同都台東区清川一丁目二四番一四号

職業

会社役員

山村鉄夫

昭和三年三月九日生

右各会社及び山村鉄夫に対する法人税法違反各被告事件について、昭和五五年三月二六日東京地方裁判所が言い渡した判決に対し、各被告会社及び被告人山村からそれぞれ控訴の申立があったので、当裁判所は、検察官隈井光出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。

主文

原判決中被告人山村鉄夫に関する部分を破棄する。

被告人山村鉄夫を懲役一年に処する。

各被告会社の本件各控訴を棄却する。

理由

本件各控訴の趣意は、弁護人寺尾正二、同榎本精一及び同桜井陽一連名の控訴趣意書二通(ただし、右控訴趣意書(一五丁のもの)五丁裏二行目に「六五〇万円」とあるのは当審第一回公判期日において「六、二五〇万円」と訂正された。)並びに弁護人寺尾正二及び同榎本精一連名の控訴趣意訂正補充申立書に、右控訴趣意に対する答弁は、検察官河野博名義の答弁書(四丁表一行目「被告が」以下から同三行目「かつ、」までの部分は当審第一回公判期日において削除された。)にそれぞれ記載されたとおりであるから、これらを引用する。

弁護人らの所論は、要するに、被告人山村及び各被告会社に対する原判決の量刑が不当に重い、殊に被告人山村に対する刑に執行猶予を付さず、同被告人を懲役一年六月の実刑に処したのは酷に過ぎる、というのである。

そこで、検討すると、本件は、いずれもいわゆるトルコ風呂を営む各被告会社(九法人)の実質上の経営者である被告人山村が昭和五〇年一〇月一日から同五三年三月三一日までの二年六か月の間に、各被告会社の業務に関し、入浴料収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、虚偽過少の確定申告をして、各被告会社の二事業年度(合計一八事業年度)の法人税合計二億四、九〇二万一、〇〇〇円を免れたという事案である。

被告人山村は、脱税の発覚及び他への波及防止を含む種々の便宜から、一店舗一法人の方式を採用したうえ、みずからは会社の代表者とはならず、従業員等を名目上の代表者に立て、その背後にあって各会社の経営を実質的に支配し、本店の所在地も、営業店舗の所在地とは無関係な別の場所にしたり、これを時々移転させるなどの工作をしていたこと、売上隠蔽の方法も徹底したもので、遠方にある被告会社の店舗の真実の売上高や経費等を記載した書類等を送らせるのに、これを一旦東京近辺の従業員宅に郵送させ、そこから自宅に届けさせるという手のこんだ方法によらせており、こうして自宅に届いた書類は、その内容を検し、妻の一恵に命じて売上高及び経費を公表分と除外分とに振り分けさせたのちは、すみやかに破棄し、あとで真実の売上高を把握されることのないように注意していたこと、各被告会社の各店舗から経費控除後の売上金を回収する方法も、直接自宅に届けさせるか、又は、都内及び横浜市内の多数の銀行の支店に設定した仮名の普通預金口座に送入金させ、これを払い戻して自宅に持ち帰るようにし、しかも、これらの預金口座は短期間のうちに解約と新規設定を繰り返して同一口座を長く使用せず、摘発の手掛かりを与えないようにしていたこと、そのうえ、妻の一恵に命じて実際の収入金額の一部を除外するとともに(売上除外の割合は、実際の売上高の二割から七割近くに及び、その平均は約五割である。)、公表売上高に見合うように経費の一部を削った会計書類等を作成させ、これに基づき、原判示のとおり、所得金額及び法人税額が零である旨、あるいは実際よりも著しく少額の所得金額及び法人税額を記載した法人税確定申告書を提出していたこと、その結果、被告会社九社の合計一八事業年度において隠蔽した所得金額が実に六億六、三四六万円余、逋脱税額は二億四、九〇二万一、〇〇〇円もの多額にのぼり、同所得申告割合は、申告所得額から赤字申告分を減算して計算すれば、実際所得金額のわずか六パーセントにとどまり、法人税連脱割合は正規の法人税額の九三パーセントにも及んだこと、被告人山村はみずからの利益のために本件脱税を計画し妻の一恵を指揮するなどして実行したものであって、各被告会社の各店舗から回収された売上金は結局被告人山村の手元で一体となり、同被告人個人の莫大な資産に変じていたこと、その他近時における脱税に対する社会意識等の変化、被告人の前歴関係等を総合勘案すると、本件一連の脱税を企て実行した被告人山村の刑事責任は重いものといわなければならない。そうすると、被告人山村が本件各犯罪事実をすべて認め、脱税額の一部を納付したこと、同被告人は戦前に在日朝鮮人の子として極貧のうちに成長しており、国籍及び前科と二重の負担を背負った同被告人が金銭に執着し脱税に走った心情も全く理解できなくもないこと、同被告人は本件と併合罪の関係に立つ売春防止法違反罪により、昭和五四年三月一五日横浜地方裁判所で懲役二年及び罰金三〇万円、懲役刑につき執行猶予四年の判決の言い渡しを受け(同年同月三〇日確定)、現在はその猶予期間中であり、本件について実刑の判決が確定すれば、右執行猶予が取り消され、合わせて刑に服さなければならなくなること、同被告人は、脱税の点を含め何かと問題の多いトルコ風呂の経営から徐々に手を引き、新宿区内においてビジネスホテル、レストラン、貸ビル等を行う会社の経営を開始したのであるが、これらの会社経営は未だ軌道に乗るまでの段階には達しておらず、同被告人の長期間に及ぶ受刑は、これらの会社経営に深刻な影響をもたらす虞があること、その他同被告人の健康状態等について斟酌してみても、原判決当時においては、同被告人に対する原判決の量刑が重過ぎて不当であるとまでは認められない。

しかしながら、前記同被告人のために酌むべき事情に加えて、同被告人が原判決後も、各被告会社の店舗の処分等によって捻出した資金により各被告会社の法人税本税、重加算税等の国税及び各種地方税の納付に努め、原判決当時における納付額一億六、三〇〇万円余に加えて、その後更に三億五、一〇〇万円余を追加納付したこと、前記新宿で始めた会社経営も依然として困難な経営状態から脱却できないでいること等に徴すると、現段階においては、被告人山村に対する原判決の量刑は刑期の点でいささか重きに過ぎ、これを破棄しなければ明らかに正義に反するものと認められる。

一方、各被告会社に対する原判決の量刑は、各被告会社それぞれの所得秘匿の割合、逋脱税額、税逋脱の割合等に着目してなされた妥当なものであって、これが重きに過ぎて不当であるとは認められないから、各被告会社に関する論旨はいずれも理由がない。

よって、刑訴法三九六条により各被告会社の本件各控訴を棄却し、同法三九七条二項により原判決中被告人山村に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書により更に次のとおり判決する。

原判決の認定した被告人山村に対する罪となるべき事実はいずれも行為時においては昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、当審判決時においては右改正後の法人税法一五九条一項にそれぞれ該当するので、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上の各罪と原判示確定判決のあった罪とは刑法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ていない本件各罪につき更に処断すべきところ、同各罪は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い原判示別表番号18の罪の刑に法定の加重をし、その刑期範囲内で、前記検討したところに従い、被告人山村を懲役一年に処することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 海老原震一 裁判官 杉山英巳 裁判官 浜井一夫)

○ 控訴趣意書

被告人 楠本観光有限会社

同 光陽商事有限会社

同 横浜起業有限会社

同 有限会社一福商事

同 瀬戸観光有限会社

同 松山観光有限会社

同 有限会社福岡城

同 西日本起業有限会社

同 大栄観光株式会社

同 山村鉄夫

右の者らに対する法人税法違反被告事件について左の通り控訴の趣意を陳述する。

昭和五五年七月一六日

右弁護人 寺尾正二

同 榎本精一

同 桜井陽一

東京高等裁判所第一刑事部御中

原判決は量刑重きに過ぎ破棄さるべきである。

第一、(一) 原判決は起訴状記載の事実を略々認め(松山観光有限会社にかかる昭和五二年二月期の入浴収入ににつき金五〇円を控除した外はすべて起訴状記載の事実を認定)

被告会社 楠本観光有限会社を罰金二五〇万円に

同 光陽商事有限会社を罰金四五〇万円に

同 横浜起業有限会社を罰金七五〇万円に

同 有限会社一福商事を罰金四〇〇万円に

同 瀬戸観光有限会社を罰金一、二〇〇万円に

同 松山観光有限会社を罰金七〇〇万円に

同 有限会社福岡城を罰金七五〇万円に

同 西日本起業有限会社を罰金七〇〇万円に

同 大栄観光株式会社を罰金一、三〇〇万円に

被告人 山村鉄夫を懲役一年六か月に

それぞれ処する旨の判決を言渡した。

(二) しかして原判決は量刑の理由につき、特に三一頁に亘り租税ほ脱犯に対する処罰の基本理念の変遷から説き起し、申告納税方式を採っている現在、直接税のほ脱行為は自然犯化し、違反者にはその反社会性、反道徳性に着目して制裁としての刑罰を科すべく、又、ほ脱犯は極めて悪質な伝播性の強い犯罪であるとの前提のもとに、一般予防と特別予防の面からの刑罰の在り方を論じ、本件ほ脱行為の態様、動機その他諸般の情状を述べ、有利な情状を考慮しても被告人山村に対し刑の執行猶予を相当とする事由は見出し難いとして、前記の通り懲役一年六月の実刑に処した。

(三) 右の如き原判決の論ずる量刑の理由には敢て異を唱えるものでなく、却って被告人山村の本体犯行については強い非難は免れ難いこと、従って同被告人に対し重い責任を追及されてもこれまた止むを得ないところとは思料はする。

(四) しかし、原判決も認めている様に、従来この種の犯罪につき、有罪とされて科される懲役刑は殆ど刑の執行猶予が付されていたことも隠れもない公知の事実であり、本件の直前約二週間前に同じ裁判官によって言渡された李中錫被告に対する法人税違反についての実刑判決が、実に昭和二五年以来、三〇年振りの初めての実刑判決であり、本件がそれに次ぐ二件目のものであることはこれまた公知の事実である。

勿論、被告人山村が、発覚しても懲役刑の実刑に科されることなく、例外なく執行猶予となるということを計算して本件犯行に及んだものではないにしても、三〇年振りの実刑判決だとなると―三〇年振りの判決だから前述の様に三一頁にも及ぶような厖大な説示がされたものとも考えられるが、そして又、有名人や有名大会社の租税ほ脱犯の多い現在、一罰百戒、社会に対する警告の意味をも含めて、一審裁判官が右の如き論陣を張ったものと思料されるが―いくらほ脱犯の根本理念の変遷を説いても自然犯化したと言っても、申告納税制度を破壊し、法人制度に対する挑戦なりと非難しても、そして又、ほ脱率が約九四%に及び従って申告率が約六%程度の極めて低い率であったと被告人の所為を難じても、三〇年間のほ脱犯の中にはもっと非道いものもあったのではないかとの一抹の思いなしとしないであろうし、一方それはそれとして、本件も巨細に検討すれば一審判決の指摘するような非難を超えて、同情の余地なしとしないと思料し、以下、弁護人の見解を開陳する次第である。

第二、 弁護人らは被告人ら、特に被告人山村については左の如き憫諒すべき情状があり、懲役一年六月はともかくとして刑の執行を猶予されるべきであり、結局原判決は量刑重きに過ぎ、破棄されるべきであると思料する。

(一) 先ず、被告人山村が本件犯行に及んだ動機につき弁護人が一審弁論の際、動機として最初はトルコ風呂拡張のため、店舗が増えてからはまともな事業に踏み出す資金蓄積のため脱税したという被告人の検察庁での供述は直接の動機であり、そのよって来るところは、被告人の辿った人生の中に萠芽を見出すとし、韓国人として生まれ、少年時代父母を喪い、家も戦災で焼かれ、幼い弟妹と共に天涯孤児となり、住むに家なく、頼るに人なく、物資不足の戦時下で苦労し、一旦帰鮮したものの故国も日本生まれの被告には将来を托す余地とてなく、再び東京に舞い戻り、敗戦下の混乱期に足を踏みすべらし強盗罪に問われ、服役中、傷害致死事件を惹き起こし、永い刑務所生活を終えて婦人靴の加工業を始め、会社組織で仕事を始めたが倒産、病気と苦労に苦労を重ね、社会の底辺を這いずり廻る生活を続けているうち、妻一恵にめぐり会い、漸く人の愛を知り、やがて父となり、人間として、夫として又父としての自覚と責任感から新しい人生へと考えたが韓国人としての、そして前科者としての二重のハンディキャップを負う被告人が、社会の底辺から浮び上る為に、先ず金を得ることを考えたとしても贅沢や道楽をする為でなく、妻や子の幸福を購うため先づ金を蓄めることを考えたとしても無下に非難し去る訳にいかない。被告人の原審公判廷で一〇年間は大目に見てもらい度い気持から脱税したとの供述は、いみじくも右の心境を表わして余りあると思料される旨論じたことにつき、原判決は「確かに被告人の生い立ちにつき同情を否定し得ない部分は窺われるとしても一〇年間脱税しても酌量されるという理由には何らなり得ないと言わねばならない」とした。

弁護人は被告人の生い立ちから一〇年間脱税しても酌量されるべきだという論理を展開した訳ではない。世の中にはいわゆる大企業と称する商社が資本と組織と信用とを総動員して組織的な法人税のほ脱事犯が報道されたりするがこれらに比べれば無下に非難のみ加えるのは如何なものであろうか。国籍、前科と二重のハンディキャップを負う被告人が金に執着を示した結果、ほ脱したとしても、又、生活の基盤を築くまでの間という被告人の切ない気持から本件犯行に及んだとしたら、情状の一つとして酌量されてもいいのではなかろうか。

しかも原判決は「新しい事業といっても被告人自身の経営する利欲追及のための企業に過ぎない」と断定するが、成る程、被告人の企図する新しい事業が儲けることを考えていることは事実であろう。しかし一旦事業が開始されればそこで働く人々(その家族をも含めて)の生活を当該事業が支えることとなり関連事業との共存共栄の関係も生じるのである。現に被告人が始めた新規事業には約三〇〇人の従業員がおり、一ヵ月八、〇〇〇万円から一億円の給料が支払われていることは原審公判廷における山村一恵被告人の各供述によって明かである。

即ち三〇〇人とその家族は被告人の新規事業に依存して生活しているものであり、しかも未だ事業は軌道に乗らず、被告人の利益は遥か将来のことに属し、この間の事実を無視し、被告人の利益追及のみと断ずるのは聊か行き過ぎの議論ではなかろうか。

(二) 一審判決は被告人山村の税に対する認識、特に納税義務についての観念が稀薄だと指摘する。本件一連の行為から、かように指摘されても止むないところ、反論の余地は全くない。

しかし現在においては納税義務の重要さを充分認識し、過去の所為を反省し、後悔し、進んで昭和五四年五月各社につき修正申告をなし、更に検察当局の取調完了後、右取調べの結果に基き、昭和五五年二月再修正申告をなしたことは一審の際提出した修正申告書により明らかである。

右修正申告に基く法人税については昭和五一年、同五二年度分の外、捜査の対象とならない昭和五〇年度分も含めて修正申告をし、この三年間の法人税(本税)総額三〇三、五五一、六〇〇円につき昭和五五年六月現在二六〇、〇三八、三〇〇円を支払い、未納額四三、五一三、三〇〇円については昭和五五年六月二五日から同年一二月二五日まで毎月二五日を支払期日とする各額面六〇〇万円(最終回は六、一五三、三〇〇円)の約束手形七通を国税当局に差出し、遅くも本年一二月二五日までには完納の予定である。しかもその間でも後記の如く不動産の処分が出来次第、逐次、右分割とは関係なく処分金額を右税金の支払の引当とする予定である。

又、地方税合計一〇一、三六九、五五〇円のうち既に納付した額は一一、八一八、四〇〇円で差引未納額は八九、五五一、一五〇円であるが延滞金も含めて鋭意不動産を売却し、早急に支払う予定であり、不動産の処分がその間に出来ない場合でも昭和五六年七月までにはすべて完納の計画をたてている次第である。

因みに、再修正分は未だ税額が告知されていないが、告知次第、早急に支払う予定である。

又、参考までに、今迄に処分し税金に充てた物件は

(イ) 一福商事経営の 大閣

(ロ) 福岡城経営の 福岡城

(ハ) 西日本起業経営の 徳川

であり、現に売りに出しているものは

(イ) 横浜起業 羽衣

(ロ) 瀬戸観光 東京トルコ

(ハ) 松山観光 大奥

(ニ) 大栄観光 石庭

(ホ) 楠本観光 ナポレオン

売却の見込がないため他に賃貸しているもの

光陽商事 日本橋

(なお、売りに出しているものは営業をしていないと高値に売れないので止むなく仮営業している次第であり、楠本観光のナポレオンも賃貸若くは売却等処分を決めている次第である)

(三) 原判決は国税局の取調べ当時の証拠湮滅行為を取上げて非難する。

確かに当時、原判決指摘の如きいわゆる証拠湮滅行為をしたことは事実であるが、これは逃れられるものなら逃れたいとする一度は考える被疑者の心理が、無責任な第三者の助言を鵜呑みにした結果であり、敢て悪性の徴表として見るのは酷に過ぎはしまいか、その証拠には検察庁における取調べの際は、事実を率直に認め、反省の態度を示し、一審公判廷でも公訴事実のすべてを認め、全く争わぬどころか改悛を誓っていることは誠に明かなところである。

(四) 又、原判決は再犯の虞の有無を論ずるに当り、依然としてトルコ風呂を経営しており、妻一恵をして、従前と同様、帳面をつけているとし、会社の経理体制の改善ないし、被告人方への送金の金額の正確な把握のための改善策等につき何等その方法が窺われず再犯の虞全く無いとは言えないとしている。

先ず、トルコ風呂を経営していることは事実だが、一審公判廷における妻一恵は被告人の供述によって明かなように、かねてトルコ風呂を廃めたい考えでいたところであり、この事件を契機として廃業することとし、しかも税金を支払う為にはトルコ風呂を売却するの外ないが、いきなり廃業してはこれが処分が出来にくくなるのみならず、価格においても低くならざるを得ないので処分の可能性あるものは仮営業の形で経営続け、逐次旦随時売却をしているものであり、既に売却したもの三軒、売りに出しているもの五軒、当分売却の見込のない一軒は他に賃貸しているのが現状である。

しかも帳簿及会計事務は内山会計事務所に依頼し、担当者古森隆が責任を負うてこれが整理に当っている次第であり、しかも、被告人自身二度と再びかかる事件を起さぬことを誓っており、再犯の虞は全くないと確信する次第である。

(五) なお、被告人の前科前歴を見れば或は遵法精神に欠けるとの非難もありうると思うが、古い前科はさておき最近の売春防止法違反の前科とは罪質が異なるし、現に執行猶予中の売春防止法違反の犯罪とはいわば余罪の関係にあり、刑法第二五条第二項の適用はないものであり。

(六) 被告人山村が実刑に処せられんが、前記の如く納税のための不動産の処分に大きな支障の虞あり、さるきだに納税のため換金の必要に迫られていることが知れれば、足許をつけ込まれて安く買われる虞があり、いわんや肝腎の主人公が不在となれば更に買いたたかれる危険にさらされること必定である。

(七) 更に新に起した事業も緒についたばかりで未だ軌道に乗ったとは言えず、莫大な資本―殆んどが借り入れ金―をかけ、三〇〇人余の従業員を抱え、ともすれば赤字になろうとする事業に必死に努力している最中であり、万一、山村被告人が実刑に処せられんが、たちまちに倒産への道を直行するであろうことは目に見えており、かくては従業員の生活も不安に晒され、関連産業も多大の影響を受け、社会的被害も無視しかねるところである。

第三、結語

以上、論じた様に原判決の非難も理解出来ることはあるが、

(一) 被告人は検察庁以来すべてを認めて反省し、改悛を誓っており

(二) 現に修正申告、再修正申告をし、不動産を処分して着々と納税の実を上げ、本税についてはその大部分を納税し、近々完納の見込があること。

(三) 再犯の虞全くないこと

(四) 前科はあっても同種前科はないこと

(五) 被告人山村を実刑に処することにより社会的影響をも併せ考えれば、原判決の非難は非難として懲役刑についての執行を猶予されるべきであると思料する。

○ 控訴趣意書

被告人 楠本観光有限会社

同 光陽商事有限会社

同 横浜起業有限会社

同 有限会社一福商事

同 瀬戸観光有限会社

同 松山観光有限会社

同 有限会社福岡城

同 西日本起業有限会社

同 大栄観光有限会社

同 山村鉄夫

右の者らに対する法人税法違反各被告事件につき、弁護人らの控訴の趣意は次のとおりである。

昭和五五年七月一六日

右山村鉄夫主任弁護人 寺尾正二

右楠本観光外八社主任弁護人 榎本精一

弁護人 桜井陽一

東京高等裁判所

第一刑事部 御中

量刑不当

原判決が被告人山村鉄夫を懲役一年六月の実刑に処し、同被告人に対し刑の執行を猶予しなかったのは、刑の量定が重きに過ぎて不当であるから、刑訴法三八一条、三九七条一項により破棄されなければならない。

仮りに然らずとするも、当審における事実の取調の結果明らかとなるであろう、原判決後も浴場の施設を処分し売得金によって納税を完遂する等原判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき諸般の情状をご勘案のうえ、刑訴法三九七条二項、三九三条二項により、職権で原判決を破棄し、是非とも同被告人に対し刑の執行を猶予し、同被告人をして心から裁判に悦服し、再びこのような不心得を繰返えさせないよう、ご寛大な裁判をお願いする。

次にその理由を詳述する。

一、(1) 原判決は、被告人山村鉄夫は、被告人楠本観光(有)ほか八社の実質的経営者として右各会社の業務全般を統括しているものであるが、各被告会社の業務に関し、各会社の法人税を免れようと企て、入浴料収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五一年度及び同五二年度における実際所得金額をごまかして過少申告し、もって正規の法人税額と申告税額との差額をそれぞれ免れたものであると認定した。

(2) 事実認定については、原審において被告人の認めて争わないところであり、右二年間を通じ、正規の法人税額が計二億六、七四三万八、〇〇〇円であるのに対し、申告税額が計一、八四一万七、〇〇〇円であるから、その差額計二億四、九〇二万一、〇〇〇円がほ脱税額で、ほ脱税額を正規の税額で除したほ脱税率が約九三%に達していること。

しかも、所得かくしの方法も徹底していることにかんがみれば、原判決の量刑理由も一概に否定し去れないものがあることは弁護人としてもある程度認めないわけにはいかない。

(3) しかしながら、本件につき同被告人を懲役一年六月の実刑に処することは、同被告人が昭和五四年三月一五日横浜地方裁判所で売春防止法違反により懲役二年、四年間執行猶予、罰金三〇万円に処せられ、同月三〇日確定していること、これが刑法二六条二号により必要的に取消されるものであることを考えるとき、原判決は、被告人を懲役三年六月の実刑に処したのと実質的に変わらないことになるが、それでもなおかつ原判決の量定は妥当なものといえるであろうか、大いに疑問であるといわざるを得ない。

(4) 原判決は、本件が実刑に値するゆえんの理由として、一、租税ほ脱犯(直接税)に対する処罰の基本的理念、二、本件ほ脱犯の特質、三、被告人の一般的情状という三つの項目にわけて蛇蜒三二ページにわたって論述したうえ、刑の執行猶予を相当とする事由を見出し得ないと論結される。まことに気宇壮大にして意欲的、啓蒙的な論述で傾聴に値する内容を含むが、かく千萬言を用いなければ自らを説得し得ない(自分を説得しえないでどうして人を裁くことができようか)ところに問題がある。

(5) 新聞報道によれば(昭和五五年三月一一日読売)トルコ風呂の経営で約五億円を脱税し、法人税法違反に問われた埼玉県川口市……会社役員A被告に対する判決公判が一〇日午後、東京地裁刑事二五部で開かれ、松沢智裁判官は、被告に懲役一年六月(求刑・二年六月)の実刑、またAが実質的に経営していた四法人に対し、罰金計一億二、〇〇〇万円(求刑・同一億四、〇〇〇万円)の有罪判決を言い渡した。脱税事件だけで実刑判決が出たのは昭和二五年以来で、戦後六件目。判決の中で、松沢裁判官は、被告が課税額を少なくするため、国税当局に虚偽の陳情をしていたと被告の悪質な証拠隠滅工作を指摘したうえ「国税当局は真実を十分に調査しないで、虚偽の申立を認めた」と、国税当局の査察調査のあり方を厳しく批判した。(中略)四社合わせて四九年三月から五二年六月までの間、実際は一二億四、九九六万円の所得があったのに、入浴料収入をごまかすなどの方法で、計四億八、九一〇万円の脱税をした。松沢裁判官は、判決の中で、「脱税は、他人の犠牲で不当に利得を受けようというもので、民主主義社会では最悪の犯罪。申告納税制度のもとでは、法を軽んずる風潮を生む。被告の脱税率は九九・六%で、市民の納税意欲を失わせるものだ」と、実刑判決の理由を述べた。

(下略)

そして、仄聞するのに報道陣を集めての判決の言い渡しだったという。

これだけでもみられるとおり、ほ脱税額四億八、九一〇万円、ほ脱税率九九・六%の事件と、その約半額の二億四、九〇二万円、九三%の本件とを同一に扱い、しかも必要的取消によって懲役三年六月になることを容認する判決は首肯し難い。罰金総額も六五〇〇万円で右事件の半額である。

本件の言い渡し時にも報道陣がつめかけていたという。(その前の審理段階には傍聴人は全くなかった)

松沢裁判官は検察官出身で法務大臣官房訟務部付の経歴の持主であるが、裁判官にあるまじきスタンドプレーでなければ幸いである。

(6) 朝日新聞(昭和五五年七月四日付)によれば、株の売買で約二九億円を脱税したとして所得税法違反に問われ、一審で無罪となった元殖産住宅相互会社会長T被告に対する控訴審判決公判が四日、東京高裁刑事一部で開かれた。堀江一夫裁判長は、起訴事実の株式売買、配当所得のうち家族名義分を除くすべての取引(計一二五回、二、一七五万株)をT被告個人の取引であると認定したうえで、「四七年中の総所得は三五億八、七〇〇余万円、所得税額は二六億四、三〇〇余万円だったのに六八三万余円しか申告しなかった。結局、被告の脱税額は二六億三、六〇〇余万円となる」とし、一審の無罪判決を破棄して懲役二年六月、罰金四億円(求刑同三年、八億円)執行猶予三年を言い渡した。

これによれば、ほ脱税率は九九・七%以上であるが、「複雑な社内紛争、焦点となったN自民党代議士のための政治資金づくりなどの背景となった諸般の事情を考慮」して、実刑を避け、執行猶予にした理由が述べられた由である。

(7) その他脱税に関する新聞記事は日々新聞を賑わしている。

○朝日五五、五、二〇 大洋漁業、所得隠し一八億円、海外を舞台に不正。五一年から四年間追徴九億五千万円。

○日本経済 同日 大洋漁業所得隠し、一七億円海外のエビ操業悪用

○朝日五五、六、一二 税金ごまかし空前の三四七億円、ますます手がこむ隠しのテクニック

○日本経済 同日 脱税白書、手口巧妙、額も最高、個人ふえ総額三四七億。

五四年度在庫操作、カルテ虚偽も

○朝日五五、七、六 武居歯科、所得隠し二一億

不正受給の診療報酬“運用”

等々、枚挙に遑がない。

ところで、脱税行為に対して刑事責任まで問う査察制度が発足したのは、昭和二三年七月、国税庁の発足(同二四年六月)に先立ってのことで、創設当時こそ、ヤミ取引の横行などで摘発された脱税犯には厳しい実刑判決が下されたが、経済の安定とともに判決には「執行猶予」が付けられるようになった。ごく最近までは脱税判決といえば「情状酌量」が必ず効くのが常識であった。この常識を破ったのが(5)の判決であり、これに続く本件の原判決であり、ほかに55、5、28東京地裁刑事二〇部が言い渡した「マルセ」事件であるという。日本経済55、6、18夕刊の記事によれば、この事件は東京都台東区上野の“アメ横”に店を構える時計、洋品雑貨販売業「マルセ」と、実質上の経営者A被告五一年二月期から三年間に総額約一億三、四〇〇万円の法人所得をごまかしていたもので、判決は罰金一、五〇〇万円、A被告に懲役一年の実刑、法人税本税と重加算税七、二〇〇万円の追徴であるという。

ただ、本件と異なる大きな相違点は、再犯脱税者であるというから、脱税の初犯者で実刑判決となったのは、現在のところ、松沢裁判官による(5)と本件被告人に対する二つだけということになる。そこでさらに進んで原判決の量刑理由について検討を加える。

二、(1) ここで想起されるのは、戦時下、戦力増強のため国家総動員法が発令され、戦略物資のみでなく生鮮食料品にいたるまで配給統制、価格統制が強化され、いわゆる経済事犯の自然犯化が叫ばれた時代に、裁判の実際面において、ビシビシと実刑判決が出たかというと決してそうではなかったことである。社会的実態として大半の国民が大なり小なり法に違反しており、法を遵守していたのでは生存を維持することすら出来ない状態の下では、厳罰は空疎なものとなり、法の威信を却って害うことを当時の裁判官は知っていたからである。

(2) 仁徳天皇の善政として、三年間朝貢を免除した後、高楼に上って民家から煙の立つを眺めて、民の竃は賑いにけりと宣われたというのは有名な話である。また昔から苛斂誅求といい、生かさず殺さずといい、また、生かしてとるともいわれているが、これらは支配者の徴税の方針したがって政治の基本方針、姿勢を示す標語である。そして、九六四(くろよん)の言葉は戦前から存在した。税法上は税は国民の各層に平等に出来ていたとしても、徴税の現実面においては、源泉徴収される俸給生活者はほとんど税額を捕捉徴収されるのにひきかえ、中小企業者等は六程度の徴税に止まっているし、更に農民にいたっては四位しか捕捉されていないことを象徴的に述べた言葉である。そして実際上も、仮りに税法通りの徴税が行われたとすれば日本経済は税の重圧にたえかねてつぶれてしまうであろう。日本経済が成立っているのは、ほどほどの徴税で保ち合っているからであると考える。時の政治情勢によって増税が叫ばれたり、沙汰やみになってみたり、再燃したりするのは、それを物語っている。そして、一企業が一旦査察を受け、起訴され裁判となるや、修正申告納税、延滞税、重加算税、住民税、罰金等によって再起困難の打撃を受けて倒産するにいたる。そのうえに懲役刑の実刑に処するのはよくよくの場合でなければならない。

(3) 原判決もいうとおり、「従来、租税ほ脱犯においては、有罪とされて科された懲役刑について、刑の執行猶予を付されることがそのほとんどであって、むしろ、併科された罰金刑によって、犯情により、ほ脱した税額と同額までの財産刑を科することによって金銭的制裁を加えることが刑政目的に合致する所以と説く者も少なくない。」のであり、また、それでよいのではなかろうか。伝家の宝刀は抜かざるに如くはないのである。事実を卒直に認め、悪うございましたとひれ伏している者に、初犯者たる被告人に、持てる物すべてを処分して納税の源資に充てるべく日夜努力している被告人に、なおかつ、懲役刑の実刑を科するのでなければ刑の目的が達成できないであろうか。被告人も日本国民の一人である。全体はその構成員たる個体を切り捨て去ることはできない。

(4) 正確な資料はもたないが、在留韓国人の約半数は生活扶助を受けているという。その中にあって被告人は、後述するように、とにもかくにも刻苦精励、泥沼の生活から立ち上がろうとしてあせりすぎて本件の過ちを仕出かしたのであるが、納税者の一員には違いないのである。

(5) 原判決は、わが国において納税していない欠損法人が全体の約半数を占めていることを指摘し、被告人の対為を放置することは、“法人にすれば税が安くなり有利である”という考え方が悪用され増幅する危険があることを慨嘆し、伝播性を有する危険が極めて強いから、被告人の責任はいたって重いという。まさに一罰百戒の思想そのものであり、戦時下一派の裁判官や大方の検察官の思考を回想させるものがある。

(6) 例を交通秩序にとると、無免許、酒酔い運転は危険この上もない故意犯であるが、裁判の実際面において、初犯者をいきなり実刑に処することはまずあり得ない。短期自由刑の弊害を避けようとする面もあるが、主な理由は、一度は刑の執行を猶予し身をもって反省する機会を与え、なおかつ反く者に対して実刑に処することとするのが、むしろ刑政の目的にそうからにほかならない。

(7) 原判決が、「二、本件ほ脱犯の特質の項を設け、(一)(不正手段の態様と被告人の役割)、(二)(ほ脱税額、申告率)に分けて詳述されるところは説得力に富むけれども、所得秘匿の方法、手段は他の事犯においても似たりよったりで、特に悪質と断定するほどのことはなく、他の事例においても所得を秘匿しようとすれば徹底を期するのは人情である。ただ判旨も指摘するように、各被告会社九社の売上金額につき公表経費を賄うに足る程度の金額だけを公表させ、その金の全部を除外させることとした一点は、物事にほどほどということをわきまえぬ被告人の税に対する蔑視の現れで弁解の余地がない。しかし、事案の個別的処理を使命とする裁判所として過度に伝播性を強調する必要はないのではなかろうか(それは検察官の態度である)。

(8) 被告人のこのような納税倫理の欠如は、むしろ、被告人の生活歴に深く根ざしているのであって、この点生粋の日本人の意識ではなく虚げられた韓国人の拝金思想に由来することを憐憫の情をもってご理解願いたいのである。

被告人は、韓国人として生まれ、一五歳の折母に死なれ、翌年には父を喪い、幼い弟妹と共に天涯の孤児となり、しかも戦災のため家を焼かれ、住むに家なく頼るに人なく、物資不足の戦時下彷徨し、一旦、帰鮮したが、故国も日本生まれの被告人にとっては将来を托す余地もなく、再び東京に舞い戻ったものの、敗戦下の混乱期に足を踏み外して強盗罪に問われ、服役中傷害致死事件を起こして永い刑務所生活の後、ようやく出所し、婦人靴の加工を習得、独立して会社組織で仕事を始めたが倒産、やがて病気入院した。その際、親族から勘当まで受けて結婚した妻にめぐりあい、ここにはじめて人間愛にめざめ、子を成し何とか一人前の幸福な生活をと考え、過去の惨めな底辺の生活から浮び上ろうと考えるに至った。

とはいえ、頼る背景もなく、力もなく、むしろ国籍や前科は重いハンディキャップ、社会の底辺からの脱却には金を、と考えたとしても、それは贅沢をするためでなく、自分や妻子の幸福を購うためと考えたとしても無下に非難するのは酷である。ユダヤ人の価値尺度は金であり、アメリカ社会においても同様であるといわれる。いみじくも一〇年間は大目に見て貰いたい気持から脱税したという被告人の心境こそこの事を端的に表わして余りあり、そして、原審公判廷において、脱税ということが利益にならないことが遅まきながらよく分った旨告白しているのである。

三、原判決時の納税実績

別表、第一納税一覧(二)のとおりである。

四、原判決後の納税実績及び納税予定

同表、(三)、(四)のとおりである。

納税の源資としては、第二税金納付の物件を処分して当てる。

五、経理体制の是正

起訴後、会計事務は妻の手を離れて、台東区浅草一-三七-八内山会計事務所の古森隆を担当者に委託して処理している。

以上の次第であるから、原判決後の情状をもご参酌のうえ、是非とも刑の執行を猶予されますよう上申する次第である。

第一、納税一覧(修正申告による)

(一) 九社法人税総額(昭和五十年五十一年及び五十二年度分)

金 三〇三、五五一、六〇〇円

うち五十年度分 三四、四一七、七〇〇円

昭和五十一年、五十二年合計二六九、一三三、九〇〇円

(二) 第一審弁論終結時の納税額(昭和五十五年三月二六日現在)

金 一六三、三五二、九〇〇円

(三) 第一審判決後の納税額(昭和五十五年七月一六日現在)

金 九六、六八五、四〇〇円

(四) 昭和五十五年七月一六日迄の納付額総合計

金 二六〇、〇三八、三〇〇円

第二、税金納付の物件の処分の状況

(一) 処分した物件

(イ) 有限会社一福商事(太閣)

(ロ) 有限会社福岡城(福岡城)

(二) 処分決定の分

(イ) 西日本起業有限会社(徳川)

(三) 賃貸中のもの

(イ) 光陽商事有限会社(日本橋)

(四) 処分のため交渉中のもの

(イ) 楠本観光有限会社(ナポレオン)

(ロ) 横浜起業有限会社(羽衣)

(ハ) 瀬戸観光有限会社(東京)

(ニ) 松山観光有限会社(大奥)

(ホ) 大栄観光株式会社(石庭)

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